コラム
素人だらけでスタートした事業譲渡後のエンジニア会社。壊滅的な状況から売上高7倍、業界シェアNo.1になるまで
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コラム
~素人だらけでスタートした事業譲渡後のエンジニア会社。壊滅的な状況から売上高7倍、業界シェアNo.1になるまで~全国の温浴施設に自動精算機システムを展開する「ポストシステムズ」成功の秘訣
株式会社ポストシステムズでは主に温浴施設内におけるPOSシステムの販売、課金及び精算システムのソフトウェアを展開し、現在では全国約170ヵ所の温浴施設・その他施設に自動精算機システム「くあ蔵シリーズ」を販売・展開しています。
当社は、もともと温浴施設のシステムを開発・展開していた会社「リゾートポス研究所」の事業を譲渡した形で創業。
創業当初、前身会社の社員はエンジニア2名を除き全員退職し、ソフトウェアの開発はまったくの素人である社員数名で運営していました。
それまで契約していた120の温浴施設も離れていき、取引先は70施設にまで減少。そんな壊滅的な状況から、現在では売上高7倍、業界シェアNo.1になるまでの成功の秘訣をご紹介いたします。
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■経営を立て直すために行った施策・戦略
①現地に直接足を運んでオーナーとの関係性を構築
当初、取引先への訪問は、システムが壊れて対応依頼の問合せがあってそこで初めて現地に足を運んでいました。しかし、「システムが壊れてから来るのではシステム会社の意味がない」と、取引先からはしばしばお怒りの声をもらっていました。
そこで1か月に1度、全国各地の取引先である温浴施設に直接足を運び、システム機器のチェックや今困っていることはないかの相談、また1日でも長く利用いただけるよう機器周辺の掃除もサービスで行うようにしました。
すると徐々に取引先からの評判が上がっていき、ようやく1つの「システム会社」として認められてきたと実感できるまでになりました。
②新事業に次々と挑戦
<自動精算機システム「くあ蔵シリーズ」の開発・導入を開始>
取引先のニーズを知るため、定期訪問時に毎回アンケートを実施。その結果、「施設に自動精算機を導 入したい」という声が多かったことから、早速自動精算機の開発をスタート。
2011年には、大阪の大規模温浴施設の「スパワールド」に当社で初となる自動精算機システム「くあ蔵」を導入しました。
<東日本大震災時、UPS(無停電電源装置)の展開で会社の信頼を獲得>
また自動精算機開発の裏では同時進行で、停電時に電力を供給するバッテリーである「UPS(無停電電源装置)」の販売も行っていました。
2011年に起きた東日本大震災では、契約していた温浴施設で当社のUPSが電力確保の一助となり、会社の信頼を得るきっかけの1つとなりました。
■経営を立て直すまでにぶつかった課題
<ハードウェアとシステムの連携に挑戦するも、失敗の連続>
2012年以前の自動精算機は、外枠のハードウェア製作から内部のシステム製作、その両方の連携までを一連して1つの会社で行うことが主流で、ハードウェア単体を別売りする会社は当時はまだありませんでした。
これを機に当社オリジナルのハードウェア「けん蔵」の開発を試みましたが、ハードウェアとソフトのシステムを連携させることは難しく、「ICチップの電波が弱くシステムが稼働しない」といったトラブルが頻発。
約半年もの間、社員全員が修理にあたり営業が立ち行かない時期もありました。
その後、券売機業界の1社が「ハードウェア単体での販売」を解禁し即契約。当社のシステムとハードウェアを連携させ、オリジナルの自動精算機「くあ蔵日本」を開発しました。
開発した直後は実績も評判も無く契約数に伸び悩みましたが、旧交のあった株式会社スパサンフジに紹介したところ新店2施設に連続で導入してもらえることが決定。
これが評判を呼び、次々と取引先が増えていきました。
<自動精算機『くあ蔵シリーズ』が特許違反で販売中止の危機から>
そんな折、自動精算機「くあ蔵日本」が「前野原温泉 さやの湯処」の特許を違反しているとの連絡を受けました。それまで当社で販売していた自動精算機システムは「前野原温泉 さやの湯処」が既に特許を取得していたのです。
その事実を知らずに販売していた当社は一時販売中止の危機に。
それを防ぐために先方に誠心誠意謝罪し、一か八かで特許を売却してもらえないかと交渉したところ、「今後、他社の特許違反の監視をすべて行うことも難しいから」と、特許権を売却してもらえることになり2度目の経営危機をなんとか防ぐことができました。
現在でも、創業当初から変わらない直接足を運ぶスタイルのシステム機器チェックは続けており、取引先がシステムに困る前に当社が相談役となり問題を解決。
さらには新たな提案も行い取引先とのより良い関係性の構築を目指しています。
現在では、自動精算機システムを温浴施設中心に全国約170施設に展開、業界シェアはNo.1を誇ります。
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■更なる成長に向けて
「人材育成と人材確保」
今後は、希望する社員へのエンジニア育成強化を図って参ります。創業当初からこれまで、当社はエンジニア出身の社員がほとんどいない中でここまで運営してきました。
これからは社員への教育支援も幅広く行い、今ある技術の継承とともに新たな技術の革新も行っていきたいと考えております。
「システムのクラウド化と新業態への進出」
小規模の温浴施設やその他小さな施設用に、クラウドを用いた簡易的な自動精算機システムを新たに開発、展開していく予定です。
また、施設のさらなる省力化に貢献すべく、AIの技術を用いた無人受付機の開発など新業態への進出も図っていく所存です。