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入江陵介さん特別講演【前編】「オリンピックへの挑戦、そしてその先にある挫折と学び」
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【前編】
「オリンピックへの挑戦、そしてその先にある挫折と学び」
入江陵介さんによる特別講演を実施しました
2008年の北京オリンピックから連続して4度のオリンピックに出場され、数々のメダルを獲得されたトップアスリートの入江陵介さん。特に背泳ぎのスペシャリストとして知られ、2012年のロンドンオリンピックでは銀メダルと銅メダルを獲得。また日本国内外の大会でも輝かしい成績を収めており、選手を引退された現在はメディアへのご出演や競泳にとどまらず、さまざまなスポーツ活動を通じ幅広い分野で活躍されています。
そんな入江さんにリラクゼーションを通して身体の健康をサポートするラフィネグループが特別講演をオファー。講演でお話しいただいた内容を前編と後編の2部構成でご紹介いたします。
第一部テーマ
「オリンピックへの挑戦、そしてその先にある挫折と学び」
Q:過去4度のオリンピック日本代表、また最後のチャレンジとなったパリへの道のりは入江さんにとってどのようなものでしたか? 何が一番の挑戦でしたか?
5大会連続オリンピック出場への挑戦
入江さん:
僕自身4大会オリンピックに出場して、パリオリンピック出場が叶えば5大会連続出場でした。僕にとって1番の挑戦、最大のチャレンジはこの5大会連続のオリンピック出場でした。過去、4大会連続でオリンピックに出場を果たした競泳選手は僕と北島孝介さん、あと松田武志さんでその3人が史上最短での4大会出場者と言われていました。
今回、5大会出場が叶えば競泳選手としては史上初のことでしたので僕自身もそこに向かって挑戦している日々でした。結果は2024年の3月に行われた国際大会のオリンピック選考会で敗れオリンピックに行くことができず、引退することにはなったのですが、史上初の目標に向かってチャレンジできたことが非常に嬉しかったです。
また競泳界、スポーツ界で34歳という年齢は比較的上の方で、34歳で現役の選手というのはまだ少ない現状です。その中で最後まで沢山の方に応援されて後押しされて挑戦できたことは良かったなと思いました。
司会:
ご自身と向き合い挑戦し続けた期間だったということですね。
入江さん:
そうですね。競技中は1人で挑戦していますが、沢山の人からの応援や支援も僕たちの支えになっています。周りも一緒になって戦ってもらえなければ選手も戦えません。挑戦することに対して賛同いただいて温かい言葉をかけていただけるというのは非常に嬉しいなと感じていました。
Q. メダルを手にするまでに、どのような挫折や困難がありましたか?
今度こそ世間の期待に応えると決意
入江さん:
オリンピックで初めてメダルを取ったのは2012年ですが、その前の2008年の北京大会が初めてのオリンピック出場でした。当時の目標は、まずはオリンピックという雰囲気を楽しむ、経験する、そして決勝の舞台で泳いで戦ってみることでした。
しかし当時「レーザーレーサー高速水着」という速く泳げる水着が流行した時期で、僕もその水着を着たことで急激にタイムが伸びたんですね、オリンピック直前に。そうすると周囲からの期待が今までは「オリンピックに出ること」だったのが「オリンピックで金メダルを取ること」になってしまって、それは選手としてとても苦しかったですね。北京オリンピックでは当初目標にしていた決勝進出を果たせたので喜ばしかったのですが、5位入賞という結果で世間の期待に応えられなかったことに関しては苦い思いを味わいました。
4年後のロンドンオリンピックでは「絶対にメダルを取ってやる」という気持ちで臨みました。そのためには間の3年間の世界大会でメダルを取り、今度こそ世間の期待に応える泳ぎをすると決意して取り組みました。
Q:挫折を感じたり、経験した時、何をきっかけに立ち直りましたか?
マイナスの時にこそ自分が大切にしていることや信念が見えてくる
入江さん:
僕自身1つ決めていることがあって、それは「落ち込む時はしっかり落ち込む」ということです。もちろんポジティブにやった方がいい時とか切り替えた方がいい時というのは多いですが、無理に気持ちを前向きにしてしまうと、 結果としてまた落ち込む時が来ることが多かったです。その為、本当に苦しい時は「どん底まで落ち込む」ことを意識していました。人は、落ち込み切ってしっかり時間を経ることで徐々に回復し前向きな気持ちになるものだと思います。それにマイナスの時にこそ自分が大切にしていることや信念が見えてくると思うので、プラスの感情だけでなくマイナスの感情の時こそ大切にしていました。
Q:どんな状況でもメンタルを一定に保つ方法、また入江さんならではの行動や意識の持ち方はありますか?
リフレッシュ法は音楽と映画、コーヒーと深呼吸
入江さん:
先ほどの話と繋がりますが、落ち込む時はしっかり落ち込むこともメンタルを保つために大切にしていることです。あとはどうしたら自分が気持ちよくいれるか、気分転換できるかを見つけること。例えば、音楽を聞く、美味しいものを食べる、コーヒーを飲むなどです。自分の中のリフレッシュ方法を探して日々過ごすようにしていました。
また落ち込んでいる時はそればかり考えてしまって夜寝られなかったり、ずっとマイナス思考になっていることが多いです。そういう経験をしたことがある方は多いと思いますが、その嫌な瞬間を忘れるため何ができるかを考えることが重要だと思います。それが音楽を聞く時間なのか、外に出て景色を見ながらコーヒーを飲むことなのか。僕自身よくするのは映画を見ることです。映画を見ると必然的に2時間ぐらいモニターに集中できるので、一時的に競泳を忘れたい、離れたいなと思う時には何もしないでストーリーに没頭して気分転換をしていました。
また緊張している時は、「深呼吸」をしっかりすることを意識していました。緊張していてずっと何かを考えている時って意外と呼吸に意識がいってなかったり、呼吸が止まっていたりするので「吸って吐く」ことを意識して試合前にしていました。7秒吸って7秒吐くみたいな、意外と7秒吸って7秒吐くって意識しないとできないです。自分の中のちょっと悪いものを出すようなイメージで深呼吸する。そういった呼吸法とかもメンタルをリセットする際に試していますね。
Q:競泳をやってきた最大の学びはなんですか?
競泳と出会えたから可能にできた数えきれない経験
入江さん:
一言では到底言い表すことができないのですが、競泳スポーツを通じて「全ての感情を得ることができた」ことだと思います。楽しさや嬉しさはもちろん、悲しさや悔しさ、あとは人に対して羨ましいなと思う気持ちや妬ましさなんかも、競泳を通じて経験を得ることができたのが何よりの学びでした。
そして競泳を通じて本当に多くの人と出会えたこと、日本にとどまらず世界中の人たちと出会いさまざまな経験ができたことは非常に大きかったと思います。2017年から19年には2年半ほどアメリカでトレーニングをしていましたが、その時に海外の良さや外から見える日本の良さを知ることができたのは競泳をしてきたからこそのことだと思います。幼少期から競泳と出会えて数えきれない経験ができたので本当に競泳には感謝しています。「生まれ変わってもやりたい!」と言いたいところですけど、実はそんなにやりたくないのかなと思ったりもして…。それほどの思いもしてきましたが今は「辛さ」も1つの経験だったと胸を張って言えますね。
司会:
入江さんは0歳から競泳を始めたのですよね?
入江さん:
はい、記憶がない時からしていました。6つ上に姉、3つ上に兄がおり、二人とも近所で競泳をしていたので、僕も物心つかないうちから競泳をしていました。実は自分の意思で競泳を始めたわけではないんです。1週間の習い事スケジュールに学校が終わったら競泳に行くというのを小さい時から習慣化していました。当時は遊ぶ時間や友達と過ごす時間がなくて嫌だなと思う時はありましたが、今は両親に感謝というかたくさんの習い事や経験をさせてもらって非常にありがたかったなと思います。
▶ 後編につづく